最初から、安定期になったらいろんなことをやろうと決めていた。
スリング(赤ちゃんの抱っこひも)を作ったり、部屋の模様替えをしたり、
習い事をしたり、新しい料理に挑戦したり。
これらはすべて実行した。
だって待ちに待った安定期だからね。
けれど問題がひとつあった。
つわりがなくならないことである。
つわりは3ヶ月までの辛抱で、4ヶ月めになれば妊娠していることを忘れるくらい快適な毎日を過ごせるようになると
本に書いてあった。
だから、3ヶ月目はずっと、あと1ヶ月の辛抱と思って耐え続けて、
ひとり静かに吐き気と戦っていた。
ところが4ヶ月めも5ヶ月めに入っても、つわりは一向に
おさまる気配がなかった。
ピークは少し過ぎたのがせめてもの救いだったので、
わたしはとりあえずやりたかったことを実行することに決めた。
まず、わたしはかねてからずっと興味のあった、絵を描きたいと思ったので、
絵の教室に行ってみた。
ほんとは油絵をやってみたかったのだけど、油彩の絵の具には有害な
成分が含まれているものがあるということを
以前耳にしたことがあったので、胎児にはよくないだろうと思い、
やむなく水彩画にした。
毎週月曜日、午後の3時間。
この時ばかりはつわりも少し軽くなったような気がして、
楽しく絵を描くことに没頭できた。
もしかして、つわりは気の持ちようで重くなったり軽くなったりするものなのか?と思ったほどだ。
それでも、残念なことにつわりは完全に消えてなくなることはなかった。
せっかくの安定期なのに。
4、5ヶ月めは夏真っ盛りだった。暑さが気分の悪さに拍車をかけた。
料理をするのがひどく苦痛だった。
耐えられないのは、お米の炊ける匂い。
食べられないものはたくさんあった。特にだめなのは、なぜか
タコヤキと焼き鳥、それからポトフ。
これらはたぶん妊娠初期に初めてつわりになった時に
食べてさんざんな目に遭ったからだと思う。
この3つは妊娠期間中ずっと食べられなくて、タコヤキの
屋台のそばを通るのもいやで、鼻をつまんで
走り去らなければいけないほどだった。
そんな中でもせっかくの安定期。大いに楽しまなければいけないと思い、
わたしはそれなりにがんばった。
そして一泊の旅行に行くことにも決めたのだった。