子どもが生まれたら絶対に母乳育児にするんだ!
絶対に粉ミルクは飲ませないぞ。
という断固とした決意が出産前にはあった。
ところがその決意も産後2週間ほどであっけなく消え去ってしまった。
1ヶ月健診で、「母乳ですか、粉ミルクですか」と聞かれたら、
「母乳です」と即答できることが夢だった。
母乳育児というのは、端から見るよりも、ずっとず〜っと
難しいのだ。
胎児ぽんすけが出てきたとき、最初にわたしの胸に抱くカンガルーケアを
したのだが、
いちばん最初にぽんすけが口にするものは、わたしのおっぱいであって
ほしかったので、
ぽんすけの口におっぱいをあてがってみた。
ぽんすけは泣きもせずぼーっとなっていて、吸わなかった。
カンガルーケアだと赤ちゃんが安心して、あまり大声でぎゃーぎゃー
産声をあげることはないのだそうだけど、
ぽんすけの場合は、なにしろお産が50時間半もかかったのだから
疲れきっているのかもしれない、と思った。
その日は糖水を少し飲ませただけに終わった。
生後2日め、本格的に母乳育児が始まった。
新生児は首もすわっていないし、腰や背中もぐにゃぐにゃなので、
飲ませやすい角度で抱っこをすることからすでに難しかった。
そして、自分でおっぱいを片手で持って、くわえさせる。
痛い!
歯も生えていないのに、すごく痛かった。
歯茎でわたしの乳首を一生懸命かんでいる。
新生児は、まだおっぱいを吸うのが下手なんだ〜、と痛感した。
ぽんすけはすっかりくたびれてしまって、このあとなんと8時間
ぐらい寝続けた。
ほっぺを軽くたたいても、呼んでも、頭をなでても起きなかった。
起きてからはまたおっぱいと格闘。
とうとうわたしの乳首が傷だらけになって、血がちょっと出た。
かさぶたになり、そのかさぶたが取れて、傷がむき出しになった。
その状態で、授乳するのは、かなりの勇気がいった。
助産師に相談すると、売店に馬油がおいてあるので、買ってきて塗ってみたら、
と言うので、すぐに買ってつけてみた。
100パーセント天然の馬油で、赤ちゃんの口に入っても安心らしい。
少し気が楽になった。
ぽんすけは飲むのが下手だし、わたしの乳首もまだ固くて
母乳の分泌量もまだ少ないので、
ぽんすけの体重が2934グラムから2600グラムまで落ちた。
でも、赤ちゃんはその身体に3日分のお弁当とお水を持って生まれてくると
いわれているらしいので、
最初に体重が減ってしまっても大丈夫なのだそうだ。
そんな状態のまま退院。
少し不安だったが、なんとかなるだろう、と楽観的な気持ちで
かまえることにした。
しかし授乳のたびに痛みをがまんし、歯をくいしばって耐えなければいけないのと、
産後のマタニティ・ブルーが合わさって、
何度かうつ状態になり、泣けた。
そして生後2週間めの夜中、ぽんすけが授乳中大声で泣き叫んだ。
どんなになだめてもだめだった。
夫すーちゃんは、
「母乳が足りないんじゃない?粉ミルク買ってこようか」
と言った。
そして24時間営業しているスーパーに粉ミルクを買いに出かけた。
夜中の2時をまわっていた。
粉ミルクをつくっている間、ぽんすけは狂ったように泣き続けていた。
それから80cc完食して、すこんと眠りに落ちた。
すーちゃんとふたりでほっと安堵のため息。
おそるべし、母乳育児。あなどっていました。
1ヶ月健診では、「混合栄養です」と言うはめになった。
ところが生後2ヶ月半が過ぎたある日、突然粉ミルクを飲まなくなった。
哺乳瓶の乳首をちがうメーカーのものに取り替えても、だめだった。
むりやり哺乳瓶をくわえさせるとウーウーと文句を言って、
おっぱいをあてがうと、一生懸命吸った。
この頃はやっと吸われても痛くなくなり、母乳も多く出るようになってきたし、
ぽんすけの飲み方もうまくなっていた。
どのくらい飲んだかが目で見えるので、つい粉ミルクに頼りがちに
なってしまうのだが、
ぽんすけ自身が選んだのだから、だいじょうぶなのだろう、
と思うことにした。
こうしてある日突然、混合栄養から母乳育児に変わったのだった。