つきあってた頃は、ふたりで香港に行ったり、奥日光の温泉に出かけたりした
けど、結婚してからは全然旅行なんてしなくなった。
そして妊娠6ヶ月め、はじめての家族旅行。
わたしの夫すーちゃんとのふたりきりの旅行ではなくて、おなかにいる
胎児ぽんすけもいっしょだから、家族旅行だ。
場所は、長野県のペンションに決めた。
ペンションは未経験だったので、かねてから一度泊まってみたいと思っていた。
信州八ヶ岳。
以前から一度行ってみたかったところだ。
すーちゃんとわたしには、田舎暮らしをしてみたいというちょっとした願望が
あった。
田舎暮らしに関する本をいろいろ読みあさったりもした。
でも、田舎暮らしというのはけっこう難しいことらしい。
地元の人たちとのつきあいがちゃんとできなければいけないし、
村とかの年間行事にも参加しなければいけない。
そしてなにか集まりがあれば、出向いていかなければいけない。
移住してきた人たちにとっては排他的に感じるだろうし、村の人たちも
よそ者が入ってきたことによって、気苦労も感じるだろう。
そうしたことから、田舎暮らしにあこがれて田舎に移り住んだものの挫折
してしまい、元いた都会に戻ってきてしまう人が
けっこういるらしい。
そういう実情を知って、すーちゃんとわたしは少し
気持ちがくじけてしまった。
でもこれから生まれてくる胎児ぽんすけには、自然と十分に
接してもらいたい。
生きるために必要なことや、そのほかいろいろ大事なことを、
ぽんすけには自然から学んでもらいたいのだ。
と、親心的にはつねづねそう思っている。
八ヶ岳は、10月というのにとても寒かった。寒くて、空気が
透き通っているかのようだった。
わたしは暑いのが非常に苦手で、そのうえ妊婦なのでさらに暑がりに
なっていたので、その寒さがこのうえなく心地よくて、
平気で薄着のまま外を散歩した。
ペンションはとてもアットホームなおじさんとおばさんご夫妻が
経営していて、建物は赤毛のアンの家のようだったし、
かなり満足できた。
夕食の席では、ほかのお客さんたちといろんな話もした。
好きな音楽の話や、出産と子育ての話。
わりと人づきあいが苦手なわたしでも、そういう出会いはいいなと思った。
このペンションには絵本の部屋というのがあって、壁の本棚にずらりと
絵本が並んでいた。
わたしはぽんすけに読んであげようと思って、胎教に使うらっぱのような
部分をおなかに当ててしゃべる器具を使おうと計画していたのだが、
その部屋にはほかの人たちがいたので、
ちょっと恥ずかしいので断念した。
翌朝、庭で育てているハーブのお茶や、おじさんの育てたベリーのジャムと
手作りパンなどをいただいてから、
すーちゃんとわたしはおばさんの案内ですてきな白樺林を通って、
農大の敷地内で年に一度行われるクラフト展に行った。
焼き物や染め物があって、木の笛を吹いている人や大道芸人もいた。
外には牧場があって、ヤギや牛がいた。
とてもひんやりと寒くて、もやが立ちこめていた。
なにやら少し幻想的なような、不思議な気分もした。
とてもゆったりとした、幸せな家族旅行だった。