妊娠期間中で最大のピンチが訪れてしまった。
胎児ぽんすけは、逆子のまま、わたしのおなかの中ですくすくと
育っていた。
わたしは焦った。なんとかして逆子を治したいと、ハリ治療に通った。
逆子のつぼと安産のつぼが両足にあるそうで、左右合わせて4カ所に、
ハリとお灸をやってもらった。
しかし一向にぽんすけは動かず、
そして35週になった。
主治医に呼ばれて、わたしと夫すーちゃんは診察室へ。
先生の説明によると、外回転術という治療法があって、外から
おなかを押して胎児の頭を下向きに動かす手技なのだが、
その治療をやってみようということだった。
外回転術をやっている病院はめったにないらしいのだけど、運のいいことに
その病院では行われていた。
わたしとすーちゃんは、ひとつ返事で同意した。
外回転術が成功する確率は6割ほどらしい。
1回で成功しなくても、もう1回か2回できるらしい。
でも6割って、ほとんど五分五分、やってみないとわからないという感じだな、
と思って、少し不安になった。
同意書にサインした。
胎児の入っているおなかをぐいぐい押すので、リスクが少しあるらしい。
同意書には危険性として、早期胎盤はく離、破水、そしてなんと
おそろしいことに、子宮破裂まで書いてあって、
サインするのが怖かった。
そして当日。
病院から電話があって、なんと主治医がインフルエンザで倒れたので外回転術が延期になった、という連絡だった。
わたしはびっくり仰天した。
すーちゃんも仕事を休んで待機していたのに、そりゃないだろうという
がっかりした気持ちでいっぱいだった。
とりあえず主治医が回復するのを、まんじりともしない気持ちで待った。
そして数日後、主治医も元気になって、ついにその日がやってきてしまった。
本当は、術前3時間は飲み食いをしてはいけないのだが、わたしは
うっかりチーズケーキを1切れを1時間前に食べてしまっていた。
わたしはそのことはだまっていた。
わたしとすーちゃんは病棟の個室に案内された。
わたしがベッドに横になると、助産師長がベッドの上半分を下げ、
足の下にクッションを入れた。
わたしの骨盤の中にはまっているぽんすけのお尻を
浮かせることが目的らしい。
ものすごくつらい姿勢だった。
ぽんすけの頭は、わたしのちょうど胃の下あたりに位置していたので、
胃や肺や心臓が圧迫されたみたいになって、
動悸息切れがひどくなり、
ちょっと怖くなった。
それから、子宮をやわらかくする薬を注射された。
その薬が効いてくるまでドキドキしながら待つこと20分、
再び助産師長と、ほかのスタッフ2名、それからなぜか
女医さんがひとり病室に入ってきた。
なんと今度は主治医が緊急帝王切開でオペ室に入ってしまうので、
代わりにその女医さんが受け持つということだった。
主治医とは本当に縁がないらしい。
おなかに分娩監視装置という機械をつけて、ぽんすけの心音をチェックしながら、
女医さんがわたしのおなかを押し始めた。
ぽんすけの頭が少し動いた。
その頭らしき部分を、助産師長が動かないように手で押さえている間、
女医さんがわたしのおなかを、押す!押す!
ぐえ〜〜!とわたしは心の中で叫んでいた。
とても痛かった。
その痛さに圧倒されていて、怖さは忘れていた。
ぽんすけは約10分後、わたしのおなかの中で真横になり、
その後自分の力で一気に回った。
勢いよく回ったのが感触でわかった。
ぼこーんと音がしたような気がした。実際はそんなことはないのだけど。
すーちゃんは回るのが外からでもわかった、と言った。
こうして無事にぽんすけは、頭位という頭が下にある通常の状態になった。
病院からの帰り、わたしとすーちゃんはささやかなお祝いに
レストランで食事をした。
「これで陣痛体験ができるね〜」
「帝王切開まぬがれてよかったね!」
などと話して、ふたりで喜びをかみしめたのだった。